transit

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Marrakech

マラケッシュ、午前四時。ホテルの中庭の噴水も止まっている。
木製のブラインドから白みかけた空がみえる。
近くの砂漠の冷気を感じる。

夕べ、イギリス人が集まるバーのカウンターに腰掛け、
大音量でかかるLed Zeppelinの〈Kashmir〉を聞きながら
テキーラで唇をしびれさせていると、日本人の女の子が話し掛けてきた。

だけど、マラケッシュでテキーラでツェッペリンだ。
まともに話なんかできるわけがない。
放っておくと女の子は、あきらめたのか、バーテンダーになにか叫んで、
自分のグラスを指差し、人差し指をたてた。

日本人の女の子のぽってりとした下唇を見ているうちに
三ヶ月前に別れたロンドンの彼女のことを思い出した。
凍えそうな一月のリージェントストリートで
あかりのともったショーウインドウを順番に見ていったことや、
トルファルガー広場のホームレスが、どこからか仕入れてきたワインで
ニューイヤーを祝っているのを、二人でぼんやりと見ていたことを思い出した。

遠くで市場の用意の音がし始める。

日本人の女の子は、あたりまえのようにシーツにくるまって眠っている。
しびれた体で起きあがり、テーブルのレモン水をグラスに注ぎ、ひといきに飲んだ。
それから、イスラム模様のポストカードを眺め、
ロンドンの彼女に書くメッセージを考えた。

マラケッシュで〈Kashmir〉を聞いたよ。
Jimmy Pageは、「おれが死んだらマラケッシュ上空から灰をまいてくれ」
って遺言してるような気がする。
Jimmy Pageの灰がしみこんだマラケッシュの街から
夜毎、〈Kashmir〉が聞こえてくるなんて、なんて素敵なんだろう。


メッセージは考えるだけで書かなかった。

日本人の女の子の寝息が聞こえる。
もうすぐ、コーランがはじまる。




Marrakech

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by ayu_livre | 2007-04-25 18:17