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Paris Louvre

ルーブル美術館の地下のショッピングアーケード。
CDはいつも、ここのヴァージンメガストアで買っている。
世界中からの観光客で混み合っているし、来るのも不便。
だけど、New OderやBelle&SebasstianやSonic YouthやCommonや
Curtis MayfieldやPrinceやMiles DavisやCasalsやRyuichi Sakamotoや
StonesやAirやSerge GainsbourgやCaetano Velosoなんかを
ルーブル美術館の地下で買えるのは、世界広しと言えどもここだけ。
なんだか、音楽の美術品を買ったような気分になるのがいい。
とても大事に聴いてしまう。

今は、働きながら小説を書いてる。
ギターで曲もつくってるんだけど、人の前で演奏する気にはまだなれない。

彼女は、僕の小説や音楽にあまり興味がないらしい。
僕の音楽どころか、たいていの音楽は、彼女の耳にはピンとこないみたい。

彼女が好きなのは、Robert Johnson、Junior WellsとTaj Mahalなんかのブルース、
最近のではなによりもBen Harper。

僕はいつでも、敏感に今の音に反応して、いろいろなジャンルを聞きながら
音楽を深く理解しているつもりになって、ついうんちくをしゃべりたくなってしまう。
でも、キッチンでタバコを吸いながら、Robert Johnsonの
〈Stop Breakin Down〉に合わせて体を揺らしている彼女を見ていると、
密かに、かなわない、なんて思ってしまう。
後で、こっそりRobert Johnsonを聞き直し、はまってしまったりする。

前に、「給料がうんと増えたら、なにに使う?旅行?服?」と彼女に聞いたことがある。
間髪を置かず彼女は「ブルースのCD買い占めるよ」と答えた。

明日は彼女の誕生日。
プレゼントに、今の僕の小説なんかをあげても彼女はあまり喜ばないだろうから、
ヴァージンメガストアのブルースコーナーで
John Lee HookerとMississippi John HurtのCDを買った。

いつか、彼女も興味を示すような小説や音楽がつくれれば、と思う。




Paris Louvre

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by ayu_livre | 2007-09-30 00:42

Paris CDG

よく晴れた九月の午後。屋根を開けた黒いAlfa Romeo Spiderで
シャルル・ドゴール空港に向かうハイウェイをとばしている。

助手席のアナは黙ったまま。
V6エンジンの音、タイヤの音、風の音。

アナは友人の娘で、たしか二十歳になる。夕方の便で、ロスアンジェルスヘ飛び立つ。
友人は、離婚してからしばらく、アナと二人で暮らしていた。
十八の時アナは家を出て、ひとりで暮らしはじめた。
それ以来、友人とアナはほとんど口をきいていない。

どういうわけか別々に二人に呼び出され、よく食事をしていた。
少し前に、友人から空港まで送ってやってくれないかと頼まれた。

スタジアムが見えてくる。車線を変え、加速しながらシフトを6速に入れる。
アナが突然、口を開く。
「仕事は大変?」
サイドミラーの中で後方に遠ざかるスタジアムを見ながら答える。
「たいしたこないよ」
V6エンジンの音、タイヤの音、風の音。

「ねえ」
「うん」
「クルマの色、なんで黒にしたの?」
サイドミラーに映るサイドボディの色と造形を少し見て答える。
「Serge Gainsbourgが自分の家の内装を全部黒にしたから」

空港に着き、ボーディングまでアナは一言もしゃべらなかった。
いよいよボーディングという時になってふいに聞いてきた。
「Gainsbourgの曲で、なにが一番好き?」
少し考えて答える。
「〈カナリアはバルコニーに〉」
「知らない」
「Jane Birkinのアルバムに入ってる」
「今度、送って」
「いいよ」

それから、いつものように振り向かない彼女の背中を
いつものように見送ってから、駐車場に向かった。







Paris CDG

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by ayu_livre | 2007-09-12 23:35