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Paris Le Marais

エミールと僕はいつもうんと早起きをする。

そして、朝の清潔で、ひろびろとしていて、
なにかのルールの外にいるような、あのしんとした時間をたっぷりと楽しむ。 
ベッドで過ごしたり、リビングのソファで冷たいペリエを飲みながら小説を読んだり、
片付けをしたり、静かに食べるものを用意したり。

外にもよく出かける。
すぐそばのヴォージュ広場、ギマールのユダヤ教会に行くのもいい。
ノートルダムやルーブルなんかの観光地も早朝だとプライベートな顔をしている。
冷たい風は心地よく、植物は朝露に濡れ、路地に自分達の足音が響き、
街は観光客のものでも、誰のものでもなくなる。
自己主張の強い市民もしゃべるのをやめて死んだように眠っている。
空気だけじゃなくて、自分や世界までもが清潔になったような気がする。
そういえば、僕の誕生日には、カフェフロールのまだ誰もいない2階席に陣取り、
熱々のオニオンスープで乾杯した。

僕らが本当に生きているのは、この早朝の時間だけ。
あとは残りの時間。
僕らはすでに自分達の一日を過ごしてしまった充足感と疲労感を感じながら
残りの時間、生活のためにおとなしく働く。

エミールは二人でそれぞれの仕事場に出かける時によく僕に、
「いい子にしているんだよ」と言う。そして、
「仕事以外の時間は、なにをしてもいいからね」と言う。

朝の清潔な空気が失われている仕事の時間、いい子にしているのは気持ちがいい。
怒ったり、口論したりするのも労力の無駄だしね。

今日は雨降りなので、エミールと僕は、起きてからずっとベッドで本を読んでいる。
最近僕らの間ではスペインがブームで、僕はガルシア・ロルカの詩集を、
エミールはマグリット・デュラスの「夏の夜の10時半」を読んでいる。

しばらくして、僕らは読んでいる本に飽きると、おたがいの本を交換する。
死んだ後の世界のような、きれいでしんとした朝の中で。




Paris Le Marais
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by ayu_livre | 2009-03-16 05:18