transit

Tahiti

気がつくとシャルル・ドゴール空港で買った
エビアンのペットボトルが気圧のせいでへこんでいる。
灯りのおとされたエールフランスの機内はほぼ90%がフランス人。
おそらくその中の100%がタヒチでのバカンスに胸をふくらませている。
エンジン音だけがする寝静まった機内で、エビアンのペットボトルを
そっとあけて、ひとくち口にふくむ。
寝ていた彼女がふと目を開けたので、エビアンを差出すと
素直に受け取り、ひとくち飲む。
エールフランスは、南大平洋上空を飛んでいる。
月が煌々と海と小さな島々を照らしている。
夜空は快晴。

彼女とはもう八年一緒に住んでいる。結婚はしてない。
彼女には恋人がいる。そして、こちらにも。
お互いそれをなんとなく知っている。

ヘッドフォンでは、Underworldが神秘的で高潔なテクノを演奏している。
目を閉じると、さっきまで窓の外にひろがっていた
月光の海と島々が浮かんでくる。
いろいろなことを考えようとすると、いつの間にか、
月光の海と島々のことだけを考えている。

タヒチはここ数年毎年来ている。まるで決まりごとのように。
バカンスの前日、仕事をなんとかきりあげて、支度をして、眠らずに空港へ。
飛行機でゆっくり眠る。そして、ビーチでゆっくり眠る。
ビーチでは、ピナ・コラーダをもってきてもらって、目が覚める度に少しずつ飲む。
日の高いうちは海の青で、日の沈む頃は夕暮れの赤で
全身が染め抜かれてしまったような気になる。

前方の席のカップルがキスをしている。
乾燥した機内の中で、みずみずしさを確認するように。
機内食のデザートで食べたバニラアイスクリームの味がよみがえる。
タヒチが近づく。





Tahiti

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by ayu_livre | 2007-06-24 01:29