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Paris Bastille

僕の名前はデネヴ。
毛並みは黒と茶がまじっていて、目は青、しっぽは長い。
生まれた頃は、一人暮らしのご婦人のところにいたけど、
ある九月の天気の良い日、若いカップルが部屋に入って来て
騒がしく僕を抱きかかえ、その時から彼等は雑種の猫の飼い主になった。
男の子の名前はジャン。女の子の名前はアンナ。
二人は朝どこかへ出掛けて、夕方帰って来る。
僕はその間、部屋の窓から、てっぺんにキラキラ輝く金の像がついた高い塔を眺めたり、
ワインのコルクを転がして遊んだり、
あとは陽当たりのいいところで、静かで平和な眠りを楽しんでいる。

ジャンとアンナは、よくケンカをする。
そして、よく仲直りをする。
ケンカの原因は、いろいろだけど、仲直りのきっかけは、
食べ物を二人でおいしそうに食べた時か、
ふたりのベッドの真ん中でうつらうつらしている
僕の姿をどちらかが発見した時が多い。

ジャンとアンナは、よくテレビで映画を見る。
テレビを見るのは、目が疲れるからあまり好きじゃない。
最初は、物珍しくて、首をのばして見てたけど。
でも、テレビがついている時に、
テレビの上で眠るのは好き。あったかいから。

今、ジャンとアンナは、旅行に出掛けている。
なので、僕は、前に居たご婦人のところに預けられている。
ご婦人はあまりテレビを見ない。
ジャンとアンナは、たぶん、どこかで、
相変わらずケンカをして、
相変わらず、何かおいしいものを食べて、仲直りをしているんだろう。
僕は、早くジャンとアンナが帰ってこないかな、と思う。
そうすれば、また、あったかいテレビの上で眠れるからね。






Paris Bastille

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by ayu_livre | 2007-07-22 01:49