transit

Antibe

南に帰るTGVに揺られている。
いまは、南仏のアンティーヴのあたり。

ヘッドフォンでOasisを聞いている。

平日の午後のがらんとした車内。
コートダジュールの太陽が、広大な海岸線を静かに照らしている。

この贅沢な景色を目の前にしながら、まぶたを閉じてしまう。
そして、窓のすぐ向こうに広がっている光る海岸線を思い浮かべながら眠りにつく。
南仏の日差しで、まぶたがあたたかい。

夢を見た。
子供の頃にすごしたとてもよく知っている家に、みんなと一緒にいた。
家は、なぜか行った覚えのない海岸にあって、みんなでなにかの準備をしていた。
兄がいて、母がいて、いとこがいて、おじさんがいて、
おばあちゃんがいて、昔とても仲がよかったともだちがいた。
「なんだみんな来れたんだ。元気なんだ、良かった」と思った。

誰かが「風が強くなってきたから、家に砂が入ってくるよ」と言った。
「スピーカーをしまわなきゃ」と思い、庭に出していた大きなスピーカーを持ち上げた。
スピーカーにはもう風に舞ってきた砂がたくさんついていた。
スピーカーを家に入れると誰もいなかった。
スピーカーから、Oasisの〈Cast No Shadow〉が聞こえた。

そこで目が覚めた。
ヘッドフォンでLiam Gallagherが〈Cast No Shadow〉を歌っている。
TGVは海を見下ろす断崖の上をカーブしながら走っている。
夕暮れの赤みを帯びてきた光と空と、こわいくらいきれいな海の色。
なにかのドアが開いてしまったような〈Cast No Shadow〉の壮大なストリングス。
今すぐ、どこか別の世界に連れていかれ、もう決してもどれない、
という気分に襲われる。

ヘッドフォンをとり、景色から目をそらす。
なまあたたかいペリエを口にふくむ。





Antibe

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by ayu_livre | 2007-07-22 05:09