transit

Kuta

クタビーチのロスメン。
乾いたシーツのベッドに横になり、編み上げられた高天井を眺めている。

一日の疲れがゆっくりとひいてゆくのがわかる。
まだ全身が、ウェイティングの時の海のうねりを覚えている。


この一週間、ウルワツに通い続け、
毎日、日没間際まで極上の波を楽しんだ。

波を待つ、波に乗る、浅瀬の手前で引き返し、
いくつかの波をスルーして再び波を待つ。

自分が、空と海に溶け込んだ、喜びの機械になったような気分だった。


「ウルワツにいただろう」
ある日の夕方、クタのカフェで、一眼レフカメラをもった男に声をかけられた。
ナイフとフォークを両手に持ち、ジューシーで巨大なハンバーガーに
取りかかろうとしている時だった。

話してみると男は、同じ、カリフォルニアのロングビーチ出身で、
サーフィンのプロカメラマンだという。
「明日もウルワツに行く?なら、君のライディングを撮らしてもらえないかな」
男はそう言って自分が撮った何枚かの写真を取り出した。


クタの町の喧噪が、心地よい大きさで聞こえてくる。

ロスメンの入口につる下がっている、いくつかの竹でつくられた風鈴が、
風が吹く度にカランコロンと音をたてる。


カメラマンは、二、三日して、現像した十数枚の写真をカフェに持って来た。

夕暮れの通りに、トロピカルなネオンがつきはじめていた。
写真を見ながら、一枚もらっていいか、と聞くと、全部あげるよ、と笑った。
Doorsの〈Break on Through〉がかかっていた。
夕立ちの後の、つややかな輝きのような、
Ray Manzarekのオルガン。


ロスメンの庭を他の客達が通り過ぎる。

このまま眠ってしまおうか、
それとも、冷たいジントニックを飲みに行こうか。
うとうととしながら、考えている。




Kuta

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by ayu_livre | 2007-08-13 06:00