transit

Tahiti 2

顔をつけた途端にミシミシと水中の音がする。
シュノーケリング。呼吸音。
ゆっくりとうねる水面に合わせてからだが少し上下する。
たくさんの光の輪が海底で変化する。小さなさかながひらめく。

地面についていない自分の足を見ている。
宇宙から地球を見降ろしているのはこんな感じだろうか。
でなければ、天国から地上を見降ろしているのはこんな感じだろうか。

ビーチの彼女はペーパーバックを読んでいる。
ビーチのデッキチェアに寝転がって
バスケットに詰め込んだ何冊かのペーパーバックを
かわるがわる少しずつ読むのが彼女の至福の時間。


夕べ、タヒチアンレストランで、彼女と別れることを決めた。
Jimmy Criffの〈Wonderfull World ,Beautifull People〉が小さく聞こえた。

海と日射しで、体が疲れていたので甘いものが欲しくなり、シャンパンをたのんだ。
自然に静かに話しができたのは、体が心地よく疲れていたからだろう。
話しはすぐに終わり、冷やされたシャンパンのキャビネットが来た。
ウェイターが何の音も立てずとても上手に栓を抜いたので
そのことを誉めると、ウェイターは舞台挨拶のように、少しおおげさにお辞儀をした。

気分がいい夜だった。

レストランは、断崖によせる夜の波の音で包まれ、
口の中は、きめ細かい炭酸と、飽きのこない甘さのシャンパンで包まれた。


水面に顔を上げ、振り返るとビーチがゆっくり上下している。
彼女がデッキチェアから起き上がり誰かと話しをしている。
オーストラリアから一人で来て、ビーチでずっと本を読んでいた青年だろうか。
毎日コテージとビーチを電気自動車で送迎してくれるホテルのボーイだろうか。

陸地のグリーンと海のブルーがハレーションを起こしている。

強烈なタヒチの逆光。
長いバカンスが終わる。




Tahiti 2

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by ayu_livre | 2007-08-21 06:08