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Manchester

おれとミミは仲が悪い。
朝、廊下ですれちがってもあいさつもしない。

ミミは、白い雑種の猫で、公園で具合が悪そうにしているところを、
ケイティに拾われた。
ケイティは、半年前に別の男と住むといって、ミミを連れて出て行った。
でも、すぐにミミを連れて戻って来た。
「彼が、猫と住むのはどうしてもいやだ、っていうの。
 ミミがかわいそうだから置いてあげて。お願い」
そうやって、ミミとの生活がはじまった。

ケイティと暮らしている頃から、おれとミミは、仲が悪かった。
でもなぜか、昔から寝るときは、おれの足もとでまるくなって寝ていた。
おれが寝返りをうったり、毛布を引き上げたりすると、
奴は、むくり、と首を持ち上げて、非難がましくおれを見る。
おれは、なんだよ、という目で奴を見て、しばし夜中ににらみ合ったりしていた。

ミミは、おれには強気だが、外の物音には、すぐにおびえる。
郵便配達が来たり、道路工事がはじまったり、花火が大きな音をたてたりすると、
普段は自信ありげに、ピンと上を向いているしっぽを
力なく下げて、ベッドの下に入っていく。

今日は、アパートの上の階で引っ越しをしているらしく、
朝から、かなりどたばたと騒がしい。
ミミは、いつものようにしっぽを下げて、ベッドの下に潜り込む。
おれは、ベッドの上でNMEを読みながら、
タランティーノの映画に出てくるようなアメリカ人の口調でミミを冷やかす。
ヘーイ、そこの白いチキン野郎、こわいのかいっ。

しばらくして、おれがそのままベッドでうとうとしてると
ミミが急に飛び上がってきて、おれの足首に噛み付く。
おれは、痛っ、と叫び、びっくりして飛び起きる。
奴は、ささっとキッチンの方に逃げて行く。

どうやら、奴は、チキン野郎、と言われるのが
がまんならないらしい。



Manchester
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by ayu_livre | 2008-08-28 03:02