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Roma

姉さんは、さぼりの名人だ。
ボクに毎朝、学校なんてサボッちゃいなよっていう。
よく、今日も仕事ほとんどサボッてたよ、なんて言ってる。
母さんの病院にもあんまり顔を出さないし、教会にも行かないし、
父さんのお墓になんか、3年くらい行ってないんじゃないかな。

病院やお墓に行かないの?ってたまに聞くと、
姉さんはいつも、いいのよ、って言う。元気な時、一緒にたくさん笑ったから、って。
母さんも、姉さんは来ないよというと、いいのよ、って姉さんと同じ風に言う。
後は自分でなんとかするから大丈夫、お前も、友達とたくさん遊んできなって。

学校が夏休みになってから最初の日曜日、姉さんとリナシャンテに買い物に行った。
というか姉さんの買い物につきあわされた。
姉さんは、また新しい短いスカートを買った。
ボクは、いつも姉さんのスカートは短すぎると思う。

それからスペイン広場の近くのジェラッテリアで、ふたりでアイスを食べた。
姉さんは、アイスをペロペロなめながら無愛想に言った。
「もし、あたしが、病気になっても、あんた、毎日お見舞いなんて来なくていいからね、
 あんただって、考えてみなよ、よくぜんそくで苦しそうにしてるからわかるでしょ、
 苦しさとかのわからない人に、手持ちぶさたで、無理にそばにいられても
 かえって気を使っちゃうだけだよ」
「でもボクはぜんそくの時、お母さんがいてくれたら少し安心したよ」
「それは、少し安心しただけ。ぜんそくは自分で治すの」
姉さんは、店の外を通り過ぎる人たちを興味なさそうに見ている。
色々な味を楽しもうとして、アイスをクルクルまわしながらなめている。
「それにあんたなんか、もう少ししたら、母さんともあたしとも、
 一緒にいるのが、やになってどっかに行きたくなるんだから」
「ボクは、やになんかならないよ」
「なるのよ」
そう決めつけて、姉さんは短いスカートから無駄に伸びた長い足を組みかえた。

「そのスカート短すぎるよ」ボクは反撃する。
「あら、ありがと」
姉さんはニヤリと笑って、アイスのコーンをザクとかじった。


Roma
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by ayu_livre | 2008-09-14 23:53